
嫡出否認は夫のみは合憲に!!
民法のルールが問題になった
日本の民法と呼ばれる法律では、生まれた子供との父子関係を否定する「嫡出否認」を主張することができるのが、夫婦で夫にしか認められていません。
そして、その夫にしか嫡出否認を認めていないことが、男女は平等であるとされている憲法の内容に違反するのではないかということで、争われた裁判の判決が、最高裁判所で出されました。
上記のルールを憲法違反であると主張していたのは女性ですが、結果として最高裁判所は女性の訴え(上告)を退ける決定を出しました。
最高裁判所まで争われた今回の訴えは、一審の地方裁判所・二審の高等裁判所でも、民法の嫡出否認を夫のみに認めている現在の規程は合憲であると判断しており、最後の舞台となった最高裁判所でも、一審二審と全く同じ判断がされたことになります。
日本は三審制ですので、今回の最高裁判所の決定で、嫡出否認を夫のみに認めている規程は憲法違反には当たらないことが確定したことになります。
今後、法律改正などにより、嫡出否認が夫と妻の双方に認められることがあれば、問題は解決されるでしょうが、現時点では、妻が嫡出否認を訴えることはできないことになりました。
民法の条文では「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定される」とされています。
そして、夫は子供が生まれたことを知ってから1年以内であれば、生まれた子供が自分の子供ではないとする「嫡出否認の訴え」を裁判所に起こすことが可能となっています。
今回の裁判の経緯
一審の地方裁判所も二審の高等裁判所も同じ判決をだしていますので、高等裁判所で出された判断について紹介しておきます。
高等裁判所は、夫には親子関係から発生する扶養義務を免れたり、相続人から子供を排除したりする直接の利益が発生しているが、妻は親子関係の当事者ではないと判断して、民法の規定が憲法違反ではないかとして訴えた女性の訴えを退けたことになります。
ただ、高等裁判所は現在の夫のみに嫡出否認を認めている制度に関しても少しは疑問を発しており、「妻や子供に嫡出否認を認めることが不合理になるわけではない」として、法律改正を含めた制度設計について国会の立法裁量に委ねるべきだとも指摘しています。
今回の判決で、民法改正の動きで嫡出否認についても改正が数年以内になされる可能性もあるかもしれません。
なぜ嫡出否認が問題になるのか?
母親は自分の子供であるかどうかは理解できるわけで、なぜ夫にしか嫡出否認を認めていないことが問題があるのだろうと思うかもしれません。
今回のように嫡出否認が問題となるケースとしては、妻が夫のDV行為の被害者である場合で、夫と離婚が成立する前に別の相手との間に子供ができた場合には、法律的には離婚前ということで婚姻関係にあった夫の子供と推定されることとなります。
ですが、DV被害者の妻の場合には、子供の出生届を役所に提出することで、夫の子供として認定されてしまうことや、子供の存在を夫に知られてしまうと、ますますDV行為が激しくなることを恐れる結果、出生届を出さないといったことがあったようです。
今回のケースでも出生届をだしておらず、子供が無戸籍状態になっていたことが問題になり、嫡出否認が夫にしかないことで問題が大きくなったのではないかとして、争われていたことになります。
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