
死後離婚??
配偶者が亡くなった後で離婚はできるのか?
最近の新聞に死後離婚という言葉が話題になっているとの記事が掲載されていました。
もちろん日本の法律には死後離婚という言葉はありませんので、制度をわかりやすく説明した造語ではありますが、的確に表現しているなと感心したものです。
配偶者(夫または妻)と死別した後は、配偶者の両親や兄弟姉妹などの親戚とは関係を断ち切って、今後は関わりたくないという人が増加している傾向にあるようです。
死後離婚という言葉が使用されている制度の正式名称は、「姻族関係終了届」というものになります。
自分の意思で結婚していた間の家族との縁を切るわけですから、もし切った場合には切らない場合と比較して何か不利になることがないのか?と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
ちなみに2016年度に婚姻関係終了届が提出された数は4032件となっています。
相対的な数としてはそこまで多くはない印象ではありますが、10年前と比較すると2倍近くに増加していますので、絶対数としてはかなりの増加率であると言えるのではないでしょうか。
婚姻関係終了届を提出するのは圧倒的に女性が多いということです。
理由は女性の方が男性よりも平均寿命が長いということもあるでしょうが、結婚生活の中で夫とは問題はなかったものの、家族とはもめていたので関係を切りたいと考えている人がいるのではないでしょうか。
日本では結婚して婚姻届を提出すると、配偶者の親族とも親戚関係になります。
自分の父母や祖父母は親族といいますが、配偶者の父母や祖父母は姻族と呼ばれます。
一度結婚して親戚関係になりますと、その事実は配偶者が亡くなってしまっても原則的に継続されることになります。
この姻族関係を終了させるものが婚姻関係終了届というものになるのです。
婚姻関係終了届を出すとどう変化する??
では婚姻関係終了届を提出することと、そのままにしておくことでどのような違いがあるのか見ていきましょう。
一番大きいのは、配偶者の親族に対しての扶養義務がなくなるということではないでしょうか。
死別して事実上関係性がなくなった人達の扶養義務が存在するのは苦痛でしかないと思う方もおられますから、そのような場合には婚姻関係終了届を提出することを急いだほうがいいでしょう。
届を提出することで、あなたと配偶者の家族の関係性はなくなりますので、扶養義務を自治体などから要請されることもなくなって安心して今後の生活を送ることができるのではないでしょうか。
気になるのは配偶者の遺産相続かもしれませんが、実は心配する必要はありません。
夫婦の一方が死亡した場合の相続人は配偶者であると法律によって決められていますので、例え婚姻関係終了届を提出して姻族関係が終了したとしても、あなた自身が相続する権利はそのまま残るのです。
熟年離婚した場合に問題にあがることが多い年金に関しても特に問題はありません。
法律で定められた要件させクリアしていれば、死亡後に婚姻関係終了届を提出していようが関係ないということになるのです。
終了届を出すのに相手の同意は不要
婚姻届や離婚届であれば、お互いの同意があったうえで各種の届を提出することになりますが、婚姻関係終了届を提出する場合には相手(配偶者の親族のことですね)の同意を得る必要はないとされています。
手続きもそこまで難しいわけではなく、市区町村役場であなたと死亡した配偶者の戸籍当方を提出すればいいだけです。
届を出す場合の証人も必要ありませんから、あなた自身の意思が100%尊重されるので安心して行動してください。
注意点として、離婚届と同じように、終了届を提出するだけでは、名字は自動的に元には戻りませんし、戸籍も新しくあなたを筆頭者としたものが作成されるわけではありません。
旧姓に戻したいと考えているのであれば、離婚で元の名字に戻るのと同じように復氏届を出すようにしてください。
配偶者(夫または妻)が死亡しているのに、相手の家族と関係性は継続しなければいけないという苦痛があるだけに、今後も婚姻関係終了届を提出する事例は増加傾向になると思われます。
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