
養育費の支払い確保
養育費の支払確保
養育費の支払確保の手段としては、①強制執行、②履行勧告、③履行命令、④金銭の寄付、➄審判前の保全処分等の制度があります。
強制執行の場合
強制執行には、判決や調停調書、公正証書などの強制執行力のある書面(債務命令)により養育費が定められている場合に、債務名義に基づいて地方裁判所に強制執行の申し立てをし、支払義務者の財産から強制的に支払いを確保する制度です。
離婚した夫が会社員である場合、元夫が1回でも養育費の支払を怠れば、元妻は、住んでいる地域を管轄している地方裁判所に対して給料債権の差押えを申し立てることができます。
給料債権の差し押さえの申し立てが認められると、元妻は、元夫の会社に対して毎月の給料のうち養育費相当分を自分に支払うよう求めることができます。
つまり、実質的に給料からの天引きで養育費を受け取るのと同じ効果が期待できるというわけなのです。
給料等に対する差押えは、養育費などの扶養義務に係る金銭債権に基づく強制執行の場合は、給料等の2分の1までは差押えをすることが認められています。
養育費等の支払いを求めて強制執行を行ったが完全な弁済を得ることができなかった場合や、債権者が知っている義務者の財産に強制執行しても弁済を得る見込みがない場合に、養育費等の支払義務者を裁判所に呼び出し、義務者の財産について陳述させる財産開示制度があります。
履行勧告の場合
履行勧告は、家庭裁判所の調停証書や審判調書、判決書に養育費の支払が記載されている場合、支払義務者が履行しないときは家庭裁判所において履行状況を調査のうえ履行を勧告し、支払を督促してくれる制度です。
申し立て手数料は不要であり、書面による申し立てが望ましいとされていますが、電話での申し出にも応じてくれます。
調査に際して、家庭裁判所調査官は、支払義務者の事情についてもある程度理解を示しながら、当事者双方に対して必要な助言や調整を行うことで、義務が自発的に履行されるよう促しています。
勧告に強制力はありませんが、国の機関による督促であることから、勧告を受けた相手に対してはかなりの効果が上がっているようです。
履行命令の場合
履行命令は、履行勧告によっても支払われない場合に権利者から申し立てがあると、家庭裁判所が相当と認める場合に、相当の期限を定めて義務の履行を命令する制度です。
この命令に従わない場合は、10万円以下の過料に処せられるという制裁が科せられます。
義務者に資力がなく履行困難な場合であることなどを理由に、履行命令が発せられることはほとんどなく、過料の制裁が課せられることもありませんでした。
そのため、権利者は最終的に強制執行手続きによって履行を確保するしかなく、実益が少ないということでこれまではあまり活用されて来ませんでした。
金銭の寄託の場合
金銭の寄託は、調停や審判において養育費等の支払義務を定めた場合、支払義務者の申し出により、家庭裁判所が権利者のために養育費等の金銭の寄託を受けることができるという制度です。
当事者の間に感情的なしこりがあり、養育費等を直接受け渡すことが難しい場合などに、家庭裁判所が養育費等を代わりに受け取って権利者に交付する制度です。
口座振り込みという制度が発達している現在では、養育費をわざわざ手渡しするということはよほどのことが無い限りは考えられませんので、あまり利用されることはなくなっています。
金銭の寄託は、支払義務者に支払意思と支払能力があることを前提とした制度です。
審判前の保全処分等の場合
審判前の保全処分等の場合は、家庭裁判所に養育費についての審判を申し立てをしたときに急を要する事情がある場合に、審判に先立って仮差押え、仮処分等の保全処分を命じてもらうものです。
養育費の支払義務が確定していない段階の制度です。
いきなり強制執行の手続きをする前に、履行勧告、履行命令等、他の制度の利用も慎重に検討することが大事です。
まとめ
養育費を確保する方法について、5つの方法を挙げさせていただきましたがいかがでしたでしょうか?
相手の反応によってどの手法を取ることになるかは変化してくるとは思いますが、あなたの置かれた状況に合わせて最大限に効率のいい方法を選択していただければと思います。
こちらの内容も参考にしてみてください➡「養育費とは?」