
有責主義から破綻主義への流れ
浮気をした自分から離婚を要求したいけど・・・
離婚の場合の、有責主義と破綻主義について、今回は考えてみましょう。
有責配偶者からの離婚請求
離婚のときによく使われる言葉である有責配偶者というものがあります。
有責配偶者とは、例えば家庭があるにもかかわらず、独身の女性と不倫(浮気)をして子供を作ってしまい、その事実が原因となって夫婦関係を破綻させた夫というように、結婚生活が壊れる原因を作ってしまった責任のある配偶者のことを有責配偶者と呼んでいます。
日本は、最近まで裁判所では有責配偶者からの離婚請求を認めていませんでした。
夫婦のどちらかに離婚に至る責任が認められる場合には、責任の無い方が離婚請求をすることしか認めないという考え方になります。
一般的なモラルから考えれば、責任のない方が権利を要求することができる制度は、当然ともいえますよね。
不倫(浮気)したほうから離婚したいといわれても、不倫された側にしてみれば、自分は全く悪くないわけで、いきなり離婚したいといわれてしまっては、たまったもんではありませんからね。
このような制度は有責主義と呼ばれています。
ですが、有責配偶者からの離婚請求を認めなかったとしても、すでに不倫などによって破綻してしまった夫婦の関係の復元が事実上不可能である場合には、離婚請求を認めないことが問題の解決に繋がらない場合が少なくありません。
一方で、夫婦の関係がすでに壊れており、今後も夫婦関係の修復が不可能であるなら、責任がどちらにあるとか関係なしに離婚は認めるべきであるという考え方があります。
この考え方は破綻主義と呼ばれています。
最高裁判所の判例でも、未成熟子(義務教育が終了するまでと言われていますので中学校卒業までの15歳までということになります)がいない夫婦に8年間の別居期間の事実があった場合に、有責配偶者からの離婚を認めています。
別居期間に関しては、様々な議論があるようで一概に何年別居していれば離婚を要求しても大丈夫と断言することは非常に難しいものです。
離婚を視野にした別居であれば、5年でも十分だともいわれています。
ただし、条件として離婚によって相手が今後極めて過酷な状態に置かれる心配が少ないなどの、特別な事情が必要になるようです。
法律や判例の流れとしては、これまでは有責主義が全てといった考えでしたが、事情がある場合には破綻主義でも離婚を認める方向へと、と流れが少しづつではありますが変化してきているといえるでしょう。
アメリカなどの欧米諸国では、基本的に破綻主義で運用されているようですが、有責主義と破綻主義のどちらが最適な方法かは、それぞれの夫婦によって異なるので、どっちがいい考え方とは、なかなか断言できないのが離婚の難しいところといえるでしょう。
第三者への慰謝料請求について
もしかしたら、あなたは浮気相手には慰謝料を請求することはできないのではないかと思われているかもしれませんが、そんなことはありません。
第三者の行動が原因で夫婦関係が破綻状態になった場合には、浮気相手などの第三者にも慰謝料を請求することができます。
ただし、浮気した場合に浮気相手本人ではなく、浮気をした配偶者が浮気相手の慰謝料を肩代わりしたような場合には、配偶者と浮気相手は法律的には共同不法行為に基づいて連帯債務が発生しているとされており、それは連帯債務者である一方が肩代わりしたことで慰謝料という債務は消えることになるとされているようです。
上記の説明では、ややこしい言葉の連発なので、わかりやすく例を出して説明しましょう。
あなたの夫が、既婚女性と浮気をしたとして仮定してみます。
浮気相手の既婚女性に、慰謝料を請求した場合に既婚女性の夫が慰謝料の肩代わりをしてあなたに全額を支払った場合には、慰謝料は浮気相手の夫が支払っているにも関わらず、夫の浮気相手である既婚女性が支払ったものとして、あなたが持っている慰謝料請求権が消えてしまうということになるのです。
「私は浮気をした女性に請求したのに納得いかない!」と思うかもしれませんが、夫婦は連帯保証人のような関係ですので夫婦の一方が支払うと、消えてしまうことになるのです。
離婚の問題が裁判にまでもつれ込んだ場合に、家庭裁判所に離婚訴訟を起こしていれば、浮気相手への慰謝料請求も同じ裁判で一緒に審理をしてもらうことができます。
配偶者とは離婚をすることなく、再構築を選択したものの、浮気相手は許せないので慰謝料を請求したいと思った場合には、家庭裁判所ではなく、地方裁判所(慰謝料の金額が140万円以下の低額な場合には簡易裁判所になります。)に訴えることになります。
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